「はあ・・・・つ、着いた!クチバシティ・・・・にしても・・・・・」
六番道路にいるトレーナーはみんな手強く、それはポケモン塾の比どころではなかった。
「ふう・・・レベルは上がった・・・・けれど、こんなに疲れさせて・・・・ごめんね、二匹とも。」
しかし、二匹は返事をしなかった。
「早くポケモンセンターに・・・・っと、あそこね!」
アイナが走っていくと、丁度誰かが向こうから走ってきた為に、アイナはぶつかって尻餅をついてしまった。
「いったた・・・あっ、ご、ごめんなさい!」
アイナが立ち上がって謝ると、その人はにこりと笑った。
「いや、大丈夫じゃよ。それより・・・・君のほうは大丈夫かね?」
「あっ、はい!全然平気です!」
そうか、と笑ったその人に、アイナはどこかであったことがあるような気がしていた。
「君は・・・・?どこから来たのかね?」
「ええと・・・・ホワイトシティからです。」
「なんと!」
どういう意味だろうと聞こうとすると、相手は先にアイナに聞いてきた。
「そうか。クチバにはジム戦かね?」
「はい。」
「・・・・・よし、名前は?」
「アイナです。」
「アイナ君、君にこれを。」
そう手渡されたのは、真っ赤な色をした機械だった。
「こっ・・・こんなのもらっちゃっていいんですか?わたし、あなたの名前も・・・」
「いいんじゃよ、これは君の役にきっと立つじゃろう。それに・・・そのポケモン達を早くセンターに連れて行かねばならんのに、引き止めてしまったしの。さあ、行ってやりなさい。」
・・・・すごい。ポケモンの体調を当ててしまうなんて。
「あ、ありがとうございました!この機械、大切にします!」
アイナはそう言って頭を下げると、走って今度こそセンターへ向かった。しかし、アイナはその親切な人の名前を聞くことを忘れてしまっていた。
 
「はい、あなたのポケモンは、みんな元気になりましたよ。」
「ありがとうございます!」
ジョーイさんからボールを受け取ると、アイナはすぐに、二匹をボールから出した。
「ヤン!」
「チコ!」
「よかったあ、元気になったね!」
アイナが喜んでいると、あの、と後ろから声がかかった。
「はい?」
「あなた、トレーナーさん?よかったら、このバトルサーチャー、無料で配っているんだけど、どう?」
「・・・バトルサーチャーって、何ですか?」
「バトルサーチャーっていうのは、バトルサーチングトレーサーのことよ。シルフカンパニーの新製品で、使い方はとっても簡単!もう一度戦いたいトレーナーがいるときに、ピピピッとセンサーで反応してくれるの。つまり、ピピッと鳴ったら、その周辺に、あなたともう一度戦いたいトレーナーがいるかもしれないわ。しかも充電は歩けば歩くだけたまるのよ。今は無料キャンペーン中なの。」
と、いうことはつまり・・・・たくさんのトレーナーと、もう一度戦えるってことで・・・・・
「は、はい!いただきます!」
「どうぞ。もし壊れたら、タマムシデパートに行けば新しいものが買えるわ。あと、直すことも出来るから。」
「ありがとうございました!」
「いいえ・・・・って、あら!?」
去ろうとしたアイナが振り返ると、バトルサーチャーをくれた、帽子を被ったお姉さんがかばんを見ていた。
「あの・・・?」
「ど、どうしたの、このポケモン図鑑!一体・・・・だれにもらったの?」
「ポケ・・・?」
アイナには何のことかわからなかったが、周りを見渡すと、センターにいる人々がみんな騒然としている。
「ポケモン図鑑だって!?」
「何だって、あの女の子が?」
「何年ぶりだ、この街に図鑑所有者が来たのは!」
「・・・えっと・・」
「だれにもらったの!?」
「し、親切な、白衣を着たおじいさんですけど・・・?」
再び、センターにざわめきが起こった。
「オーキド博士か・・・・・」
「この街に来ている噂は本当だったのか・・・・」
オーキド博士・・・・?ま、まさか。
「その人、オーキド博士って言うんですか!?」
「ええ・・・し、知らなかったの?」
「はい・・・・ラジオで・・・・聞いたことがあるだけで。」
「・・・・そうなの。この機械・・・・ポケモン図鑑はね、昔・・・七年位前に、ポケモンリーグの最年少優勝者が持っていたものなの。」
最年少優勝者・・・・・?
「そ・・・の人は今?」
「それが・・・・突然、行方不明になってしまったの。だから、彼のことはあなたが来るまでずっと、彼は伝説になっていたの。ポケモン図鑑と共にね・・。」
「そんな・・・」
この機械が、ポケモン図鑑と呼ばれるそれが、そんなに重要な意味を成すものだったとは、アイナはたった今まで知る由も無かった。
「でも、時代は確かに動いているのね・・・・」
「?どうして、ですか?」
「七年前、ポケモン図鑑の所有者は優勝した彼も含めて、三人いたの。残りの二人のうち一人は、トキワのジムリーダー。」
「ジムリーダー!?」
「そして残った一人は、ジョウト地方のラジオ塔でDJをしているの。・・・・今頃、どうしてるのかしら。」
お姉さんはため息をつくと、笑ってアイナを見た。
「貴方、名前は?」
「・・・・?アイナですけど?」
「私はコウネ。これもあげるわ。」
彼女に渡されたのは、見たことも無い機械だった。
「これって・・・」
「ポケギアよ。私のお古だけど、良かったら使って。でも違う地方には、これに凄い機能が付いたものがあるらしいけど・・。でも、私が一ついえることは、『この図鑑を持った以上は』過酷な旅になるということ・・。」
「え・・・・」
しかし、コウネは再び笑うと言った。
「だからってオーキド博士を責めるつもりはないわ。でも絶対に貴方だから、この図鑑を渡したんだと思うわ。」
「コウネさん・・」
「・・・引き止めてごめんなさいね。じゃあ。」
「・・・・あ、ありがとうございました!」
アイナはポケモンセンターを飛び出した。
「・・・ねえヤンヤンマ、チコリータ!」
「?」
「わたしもなれるかな!その伝説のトレーナーに!」
アイナの足は、ジムへと、向かっていた。
 
「ふう・・・」
「・・・にしてもあんた、なんでそこまで詳しいんだ?俺たちだってそこまでは・・・・」
「・・私も彼らと同じ、だからかな?」
「は・・・?」
彼女は微笑むと、帽子をゆっくりと脱いだ。
「・・・・・!!あ、あんたはまさか『四人・・・目』の・・」
「あの子『達』は・・どんな風になるのかな?」
彼女、コウネとアイナ―二人の運命は、この後再び交差することになるのだが、アイナの目は今、挑もうとするジムのみに向けられていた。
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