「これは・・・・いったい、どういうことじゃ」
駆け付けたオーキド博士の見た光景は――イワヤマトンネルが崩れ、ロケット団員が縛られているところに――ホーホーを肩に乗せた少年が余裕そうにたたずんでいる光景だった。
「君はいったい・・・」
博士の驚きの言葉で、少年――カツキは振り向いた。
「あなたは・・・オーキド博士・・ですね?よかった!来てくれなかったらどうしようかと思ってました。あ、僕はこういうものです」
取り出した身分証明書で、博士はすべてを理解した。
「おお、君か!『PIA』の・・・コウネ君の部下という少年は!」
博士の言葉に、カツキはすこしうつむいていった。
「ええ・・まあ。・・・あっ、ジムリーダーの皆さんはもうどこかへ行きましたよ。たぶん今頃はジムにいると思います」
「そうか・・・・しかし、わしはラジオでまた変な放送が流れているらしいと聞いてきたんじゃが・・・こんなことになるとはの」
博士の言葉に、心配ありませんよ、とカツキが励ます。
「結局小さい子のいたずらだったんでしょう?」
そういった彼の笑顔は、なぜか彼にとっては、ひどくさびしいものに感じられた。
「あっ、じゃあ僕もう行きますね。後片付け、おねがいします。」
「おい、君・・・・」
止める間もなく、彼はあっという間にホーホーで“そらをとん”でいってしまった。
 それにしても、と博士は残された団員を見た。
「こちらの眠りながら縛られている団員はホーホーの“さいみんじゅつ”・・・じゃが・・・」
博士は別の団員達を見た。彼らは縛られつつも起きてはいたが――一人残らず、何かにおびえているようだった。
「ぐ・・・怖い…動け・・ない…あの・・・・目が…っ」
「あちらは・・・・・“くろいまなざし”じゃな…。」
おそらく、ホーホー以外のポケモンによるものだろう。そこまで推測して、博士は確信した。彼は、強い。これほどの団員をたった一人で仕留められる――それこそ、若くして『PIA』の諜報員になるほどの実力・・・あの少年のどこにそんな力があるのか。
「末恐ろしいの…」
末恐ろしいといえば。
「クチバであったあの少女も同じ世代か…いやいや、これは・・・七年前と同じくらい、楽しみになってきたの…」
オーキド博士は笑みを浮かべた。

 カントー某所。そこには、四人の男女がいた。
「おい、本当かクロイマ!イワヤマのやつらがやられたってのは!」
体格のいい大男がちゃかして言うと、冷静で整った顔立ちの青年がそれを制した。
「少し静かにしろ、オメガ・・・。それも、たった一人に、だそうだ」
「なぁーに?たった一人にやられちゃったってわけ?まったく・・・何のためにあんなところにアジト作ったと思っているのよ・・。」
そういったのは、一つ縛りのお下げにした、妖艶な美女だった。
「そう言うなステラ。ジムリーダーはまた集めるとして…問題は一人でつぶしたというその男、もしかしたら『あいつ』かもしれないしな・・・なあ?」
クロイマの言葉に、部屋の隅で――檻のようなものに囲まれた少女が、びくりと震えた。
「面白くなりそうだ。さっそく・・・ボスに伝えるか」
あやしげな会話をする三人と、一人の少女――彼らの組織の名は、ロケット団。
彼らの計画を、いまだ、誰も知らない…。
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